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事業活動のグローバル化に伴い、企業が直面する人事課題はますます多様化しています。
海外に社員を駐在員として、あるいは現地法人への出向者として派遣される際には、任地の違いや赴任時期の違いにかかわらずこれら海外勤務者を公平に処遇する制度を構築する必要があります。
なかでも海外勤務者給与は処遇の根幹であり、あらゆる面で処遇の公平性であったり、給与額の根拠などが求められます。
海外勤務者給与の決定方式は様々であり、それぞれに長所と短所があります。海外人事の研究パートナーである 海外人事コンサルタント 長澤宏氏 が長年のコンサルティングを通じて日本企業向けに独自開発した”ネット保障方式(Net
to net approach)”は、標準生計費方式や購買力保障方式などの長所を随所に取り入れ、給与額決定の根拠の明確化を実現し、あらゆる面において処遇の公平性・合理性・納得性があります。
加えて、海外人事担当者などの管理者側のメンテナンスの手間とコストの両面においても圧倒的に優れています。
自信をもって導入を推奨している海外給与決定方式であり、海外人事に携わる皆様にその内容を是非とも知っていただきたいと思います。
■基本コンセプト
●海外事業を進めるに当たって、その担い手である海外勤務者の給与その他処遇を、
当初より、どの地域にも適用できて、公平で維持可能なものとして設計する。
■処遇の公平の三つの観点
●国内勤務同格者との公平
●海外勤務者間の公平(任地や赴任時期の違い、赴任形態の違いにかかわらず公平な処遇。)
●現地社員との公平
■現地通貨建て給与 (=海外基本給+家族手当)
●現地必要生計費
■円建て給与 (月例給与+賞与)
●社会保険料の被保険者負担相当額
●黒字
●残留家族の生計費(単身赴任者のみ)
■海外勤務手当
●黒字の増額
■ハードシップ手当
●黒字の増額
■家賃、子女教育費、医療費、通勤交通費の会社負担
(1)家族帯同者
(2)単身赴任者
(3)独身者
■ | 海外勤務者給与を構成する各給与・手当の支給の意義と算出根拠を明確にする。 |
■ | 海外勤務中も維持される本社の資格等級・国内理論年収に応じて、報酬に差を設ける。 |
■ | 家族帯同時の処遇をまず決定し、これをもとに単身赴任時の処遇を考える。 |
■ | 日々変動する為替レートを都度考慮しなくてもよいようにする。 |
■ | 現金給与は、現地生計費見合いの現地通貨建て給与*と、社会保険料自己負担相当額と黒字見合いの 円貨建て給与(月例給与+賞与)の二本立てとする。(*黒字見合いは含まれない。) |
■ | 現地生計費見合い給与の算定ベースには、国内で勤務していたら使っていただろう生計費(消費支出)を使用する。 |
■ | 赴任形態にかかわらず、円貨で少なくとも国内勤務時と同水準の黒字を確保。 |
■ | 国内社会保険料の個人負担分は、円建て給与から徴収。社会保険料の標準報酬月額は、理論基準内月給をもとに決定し、将来の社会保障の受給において不利益が生じないようにする。 |
■ | 単身赴任者については、残留家族がこれまで通り生活ができるように、円建て給与を家族帯同者よりも合理的に増やす。 |
■ | 海外勤務者給与は手取りで決定。任地での所得申告に伴う税は会社が負担する。 |
■ | 給与算出の際に、日本における理論税(所得税+住民税)相当額を控除するが、これを赴任者に理解させる。 |
■ | 必要に応じ、海外勤務手当など「動機付け」を目的とする手当を支給し、黒字を増額。 |
■ | ハードシップの高い地域で勤務する者に慰労金を支給し、黒字を増額。 |
■ | 標準的な金額の把握が困難な家賃は、その見合いを給与には含めず、実費を会社が負担 |
■ | 帯同子女の教育費も、学年により、通園通学させるに相応しい教育機関により様々である一方、単身赴任者や独身者には不要であるため、これも実費を会社が負担。 |
■ | 個人差が大きい医療費も、保険により給付されるものを除き、原則として実費全額を会社が負担。 (もし日本で同内容の治療を受けた場合の医療費の30%を算出できるのであれば、その金額のみ個人負担させてもよい。) |
■ | 通勤には公共交通手段の利用を原則とするが、その利用が困難な場合は、小型乗用車を1台、貸与する。その費用見合いは現地通貨建て給与には含めず、別途実費を会社負担する。 |
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●現地通貨建て、円建ての別にかかわらず出向者の給与その他の人件費は全額、現地法人負担が原則。 →海外(払い)給与、国内(払い)給与の区分は不要。
●社宅使用料や教育費自己負担などを徴収しない。入居時や学校選択時に妥当性を慎重に判断する。
(現地生計費見合いの現地通貨建て給与は、住宅費も教育費も含まないので、当然の措置。)
●誰しも与えられた給与の中で工夫して家計を営む。社員に合理的な説明ができる最も低い水準でまず決定する。
●世間相場に過度に影響されない。
(1)必要なデータの収集
■総務省の家計調査年報 実年収、各費目への支出額、各費目のウエイト。→?
■Xpatulatorの物価差レポート 日本(東京又は大阪)と任地との費目ごとの物価差。→?
レポートサンプルはこちら
(2)データの加工
?理論年収から実年収を導き、実年収から消費支出と税、社会保険料を 控除して黒字を推計。
消費支出は、別途会社負担する費目への支出額を控除して、現地必要生計費算定ベースとする。
(家族帯同時と単身赴任時に分けて算定。)
?費目ごとの物価差にウエイトを掛けて全般的な物価差を把握。
(3)データの利用
現地必要生計費算定ベースに全般的な物価差を掛けて、現地必要生計費を算出。
これに物価調査時のレートを用いて、現地通貨建て基本給を算出。