| 社会保険労務士 沓掛省三 | 人事プロフェッショナル | 海外勤務者の社会保険 | 海外人事管理 | 海外勤務規程 | 海外勤務者給与設計 | 各種相談対応 |


|HOMEへ | 本稿TOPへ | ご相談・お問い合わせ |

第1章 社会保障制度の概説
1.社会保障と社会保険
 (2)わが国の社会保障の体系と仕組み

 わが国の社会保障制度は、1950年の社会保障制度審議会の勧告をもとに、逐次その整備が図られてきたが、全国民を対象とする総合的な社会保障制度の基盤ができたのは、1961年の国民皆年金・国民皆保険体制の導入によってである。その後、各種社会福祉、児童育成、雇用関連施策、環境政策などの法的・制度的な整備が行われ、現在の社会保障体系を形づくることとなった。 社会保障制度は、租税を財源として給付を行う「社会扶助」と、保険の技術を用いて保険料を財源として給付を行う「社会保険」とに大別することができる。また、社会保障制度を分野別にみると所得保障、医療保障、社会福祉サービスに大別することができ、これらを整理すると、わが国の社会保障制度の体系は、【図表1-1-2】のようになる。

【図表1-1-2】 わが国の社会保障制度の体系



  ①社会扶助とは

 社会扶助は、公的扶助、社会手当、社会サービスから構成される。わが国における公的扶助は生活保護制度であり、社会手当には、児童手当、児童扶養手当等がある。また、社会サービスには、保健・医療・福祉分野において、社会福祉制度を通じて、社会的に支援が必要な人々に対して、地方公共団体等から提供される様々なサービスがある。

  ②社会保険とは

 わが国では、社会保険が社会保障制度の中核となっている。社会保険は、保険事故別にみると、医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5つから構成されている。このうち、年金保険と医療保険は、民間企業の従業員、公務員、それ以外の自営業者など、対象者の職域別に制度が分かれているが、すべての国民がいずれかの制度に加入する仕組みとなっている。また、社会保険は、医療保険などの短期保険と年金保険などの長期保険に分類することができる。健康保険や厚生年金保険などの被用者保険については、事業主と被用者とが原則として折半で保険料負担することになっている。なお、労働保険とは、労働者災害補償保険と雇用保険とを総称した名称である。【図表1-1-2-2】

【図表1-1-2-2】 社会保険制度概説
制度 制度概説
社会保険 狭義の社会保険 医療保険 医療保険は、疾病、負傷、死亡、出産など短期的な経済的損失について保険給付する制度である。医療給付は、金銭を給付する方法をとらず、医療機関にかかった費用を保険者から支払うという現物給付の形をとるのが原則である。また、被用者の業務上の傷病と死亡については、医療保険ではなく、使用者の補償責任を担保する労働者災害補償保険の保険事故とされている。なお、被用者のための医療保険では、被保険者である被用者本人だけでなく、その者が扶養する被扶養者の事故についても給付が行われる。
年金保険 年金保険は、老齢、障害、死亡を主な保険事故とし、原則として各種の年金給付を支給する制度で、労働能力の長期的喪失や生計維持者の死亡について、その本人や遺族の生活を保障しようとする長期保険である。したがって、同じく死亡を保険事故としていても、医療保険では埋葬料が、年金保険では遺族年金が支給される。通常、年金給付の中心である老齢年金は、25年以上の長期にわたる保険料の拠出と、一定年齢への到達とを支給条件として給付が行われ、保険料もまた長期に計算されて定められる。
介護保険 介護保険は、2000年4月に施行された比較的新しい社会保険制度である。市町村が保険者となり、被保険者(40歳以上の日本国内に住所を有する者)は保険料を拠出するかわりに、介護が必要な状態になったときに、保険者から介護サービス等の保険給付を受けることができるという仕組みの社会保険である。
労働保険 雇用保険 1974年12月に雇用保険法が成立し、翌年4月から前面的に施行された。その後、社会経済情勢の変化に伴い数次の改正が行われている。雇用保険制度は、今後の経済社会の動向に即応し、多様化した雇用政策上の課題に応えるための総合的な機能を持つ保険制度である。主として被保険者である労働者が失業した場合や雇用の継続が困難となる事由が生じた場合などに失業等給付を行い、求職活動を行う間の生活保障と雇用の安定、再就職の援助を行う。
労働者災害補償保険 労働者災害補償保険は、業務上の事由や通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡などに対して迅速かつ公正な保護をするために保険給付を行い、併せて被災労働者の社会復帰促進、被災労働者とその遺族の援護、適正な労働条件の確保などを図ることにより、労働者の福祉の増進に寄与することを目的としている。労働基準法には、使用者の災害補償責任が規定されており、この責任を保険の方法によって担保するのが労働者災害補償保険であり、保険料は原則として事業主が全額負担する。

本稿トップへ
次のページに進む
前のページに戻る