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第2章 海外人事管理と国内労働社会保険の関係
3.海外勤務者の給与
 (2)海外給与決定方式の種類

 人材を長期的に活用しようと考え、海外勤務を幹部社員育成の場としても捉える日本企業は、海外勤務中も国内勤務者との序列をうまく維持でき、日本にも円滑に帰任させることのできる本国志向の高い海外給与決定方式を採用するのが通例である。
 海外給与決定方式は【図表2-3-2】のように、大きく4種類に分けることができる。

 【図表2-3-2】 海外給与決定方式
決定方式 概 要
A 海外払い給与別建て方式 国内理論給与を海外払い基本給の算定ベースとせず、現地の必要生計費を独自に把握してそれに対応する金額を海外払い基本給として支給する方式。ただし、国内の資格に応じて金額に差が設けられる。本給絶縁方式と呼ばれることもある。
B バランスシート方式 国内理論給与の一般商品・サービス消費支出額相当額に日本との物価差を反映する指数をかけて海外払い基本給を決定する方式
(本国購買力補償方式と訳されている。ただし、生計費指数を地域間格差の設定のためだけに利用する場合は、当方式に該当しない。)
C 海外本給制度
原則として国内理論給与を全額支給し、さらに海外生計費補助を加算支給する方式。


D 任地職務給方式 海外払い給与を、現地で遂行する職務内容・難易度と現地の給与世間相場に応じて決定。必要生計費の現地社員との差を日本人手当等の名目で支給する例もある。
出所:長澤宏著「海外勤務者の人事管理」、1998年、18頁を図表化

 なお、海外給与決定方式は、どのような名前が付けられていたとしても、上記A,B,C のどれかに該当するとされ、いずれも、国内の人事制度上の役職・資格・等級または理論給与に応じて海外給与の核となる海外払い基本給(生計費見合い給与)の金額に勤務者間で差を設ける。海外勤務中に資格や理論給与が上がれば、海外給与も増額されることになる。
この場合、海外で果たす職務の難易度は国内の格付けにも海外払い基本給の金額にも反映されない。三方式の最も大きな違いは、海外払い給与別建て方式と海外本給制度は生活水準を任地基準で捉えるが、バランスシート方式は本国基準で捉えることにある。
 Dの任地職務給方式は、国内勤務者とのつながりを断ち切るものの、現地従業員との処遇の公平さが実現する。海外事業場の運営のためには、本国志向の高い他の方式よりも優れているとされている。

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