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第2章 海外人事管理と国内労働社会保険の関係
1.国内労働社会保険の海外勤務者への適用上の前提

健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険といった国内労働社会保険の海外勤務者への適用上の前提には、「海外勤務者は、いずれ日本本社に戻して再び活用し、かつその退職の場所も日本を想定している。」という海外人事管理上の考え方がその前提にあることを念頭に置く必要がある。
海外人事管理の第一人者である長澤宏氏は、著書「海外勤務者の人事管理 -納得性の高い処遇を実現するための13章-」の冒頭で、海外人事管理の必要性について次のように述べている。


海外人事管理の必要性


 海外人事管理は、そもそもなぜ必要なのだろうか。もし海外勤務を命じた社員が籍(雇用契約の相手)を完全に現地法人に移し、期間を定めずに当該事業場で勤務するのであれば、その社員の人事管理は現地法人の手に委ねられる。しかしながら、海外勤務というのは、社員の籍を日本本社に残したまま、通常1年以上の一定期間(任期)、海外の関係事業場(現地法人、海外支店、海外駐在員事務所)で勤務するいわゆる駐在あるいは在籍出向のことを指す。
 会社は、海外勤務者の任期が満了すれば、日本本社か第三国で本人の能力を再び活用することを前提としている。社員もまた、いずれ日本に帰国して本社組織の一員に復帰し、最終的な退職の場所も日本本社となることを前提として海外に赴任し、生活の基盤を日本に残す。
 このように雇用契約の相手は引き続き日本本社であるから、海外勤務の条件を海外事業場ではなく日本本社が決定することは当然のことといえる。ただし、国内転勤とは異なり、海外事業場は地理的に遠く離れ、生活環境も日本と大きな違いがあるため、いろいろな施策を新たに講じなければならない。ここに特別な海外人事管理をおこなう必要がある。

出所:長澤宏著「海外勤務者の人事管理 -納得性の高い処遇を実現するための13章-」、1998年、1頁

 近年、日本と社会保障先進国との間で社会保障協定が締結・発効され、年金制度をはじめとした社会保障制度の国際化が進みつつあるが、国内労働社会保険は、もともと日本国内だけでの保険適用、保険事故、保険給付が想定されていたため、海外勤務者とその家族を対象とする国内労働社会保険の適用については様々な不備・課題が見受けられる。
 国内労働社会保険の海外勤務者への適用及び任地における社会保障制度の適用は、当然に海外人事管理の一分野であるからして、社員及びその家族を海外に派遣する際には、不利益な取り扱いまたは過剰な取り扱いが生じないよう、十分な方策を講じなければならないのは当然のことといえる。

【参考資料2-1】 海外勤務の例

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