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第2章 海外人事管理と国内労働社会保険の関係
2.海外勤務者の派遣形態と国内労働社会保険の関係
 (1)派遣形態の区分と適正な手続き

海外勤務者は、海外勤務が終了すれば、日本本社か第三国で本人の能力を再び活用すること及び最終的な退職の場所も日本本社となることを前提としているため、通常、駐在または在籍出向の形態をとっていることは前述したとおりである。
 海外勤務者を派遣すると、【図表2-2-1-A】のように、現地において海外払い給与などの人件費が発生するとともに、国内においても国内手当などの国内払い給与や賞与、法定福利費などの人件費が発生することとなるが、人事管理上の海外勤務者の派遣形態は、【図表2-2-1-B】のように、人件費の負担方法によって、「駐在」と「出向」に区分することができる。

【図表2-2-1-A】 海外勤務者の人件費概念図

【図表2-2-1-B】 「駐在」と「出向」
派遣形態 人件費の負担方法
駐  在 現地発生人件費及び国内発生人件費のすべてを日本本社が負担
出  向
(在籍出向)
現地発生人件費及び国内発生人件費のすべてを海外現地法人が負担
※受益者負担の原則
出所:長澤宏著「海外勤務者の人事管理」、1998年、12頁を図表化

 駐在であろうが出向であろうが、国内労働社会保険の適用上その取り扱いに差異はないため、駐在や出向といった派遣形態を意識する必要はなく、海外赴任前後に国内労働社会保険各法の規定に従って諸手続きを行うこととなる。
 しかしながら、出向を前提とした海外勤務であってやむを得ない事情などにより就労ビザ未取得の状態で海外赴任した場合に、ビザ取得までの期間を日本本社からの出張扱いとし、ビザ取得後に出向扱いへと切り替え、その時点で初めて国内労働社会保険に関する諸手続きを行うケースが見受けられる。 しかし、この場合は海外赴任した時点で駐在扱いとし、国内労働社会保険に関する諸手続きを行うべきである。ビザ未取得を理由として、国内労働社会保険に関する諸手続きを行わないとする法的根拠はどこにもない。また、タイムラグを発生させずに国内労働社会保険の適正な手続きを行うといった観点からも、就労ビザ・労働許可の申請・取得は、時間的余裕をもって早目早目にアクションをとる必要があるだろう。
 なお、ここでは出向時の日本本社と海外現地法人との間で行われる人件費請求・負担の取り扱い等の解説については省略するが、税務面・経営面での諸問題発生を未然に防ぐためにも、これら取り扱いは両者間で締結する出向契約書の中で明確にしておくことを忘れてはならない。

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